精神疾患に関する相談の第一歩は「保健所」

精神疾患,相談ノウハウ

「家族に精神疾患(あるいはその疑い)があるが、精神科の受診を勧めても拒否される。この場合、どこに相談したらよいのか?」

弊社に寄せられる、初歩的なご相談の一つです。

患者本人が進んで精神科を受診するのであればよいのですが、精神疾患の特性から、家族が受診を勧めても、「自分は病気ではない」「精神科病院になど行かない」と拒否されることが多くあります。そのような場合、家族はまず、「保健所または精神保健福祉センターに相談に行く」ことをお勧めします。

精神疾患に関する相談は「保健所」または「精神保健福祉センター」へ

精神保健福祉に関する主管行政は、居住している自治体の「保健所」(または「精神保健福祉センター」)です。なお、家族が当事者本人と別居している場合には、家族ではなく「本人」の住居地の保健所が管轄となります。

保健所管轄区域案内(厚労省HP)

保健所には、職務として「相談」があります。この「相談」の内容には、心の健康相談に加え、「診療を受けるに当たっての相談」「社会復帰」なども含まれ、病院や障害福祉サービス事業所、自助グループの紹介なども行うことになっています。

さらに「訪問指導」では、医療の継続又は受診についての相談援助や勧奨、日常生活への支援、家庭内暴力、ひきこもりへの相談指導を行うとされています。「原則として本人、家族に対する十分な説明と同意の下に行うが、危機介入的な訪問など所長等が必要と認めた場合にも行うことができます」ともされています。

※職務に関して詳しくは・保健所及び市町村における精神保健福祉業務について(◆平成12年03月31日障第251号) (mhlw.go.jp) に掲載されています。

弊社でも、お問い合わせをいただいた際には、行政機関への相談履歴をうかがい、まだ一度も相談をしていない方には、まずは保健所に相談することをお勧めしています。後に精神科医療や福祉支援を利用することを考えると、公的機関への相談履歴をは必須だからです。

ポイント① 精神疾患の有無も含め、本人の現状(事実)を正確に伝える

「行政に相談しても、どうせ何もしてくれないでしょう?」

そのようにおっしゃる方もいますが、具体的なアドバイスや協力を引き出せるかどうかは、家族の相談の仕方にもかかっています。とくにコロナ禍以降は、保健所も以前にも増して多忙になっているため、相談の席では、できるだけ簡潔に「困っていること」「助けてほしい内容」を伝えるようにします。

「困っていること」は家族によっても様々ですが、多くは、「本人が受診を拒否する」「妄想や幻覚がある」「入浴や保清をしない」「食事をとらない・眠らないなど、健康が脅かされている」「本人からの暴言や暴力、金銭の無心がある」などがあります。それによって家族や近隣住民とトラブルになり、危機的な状況を迎えている家族もいます。

このような背景もあり、家族が行政に相談に行くとつい、時系列を無視して感情的に話をしてしまいがちです。「本人」のことで相談に行っているのに、「夫(妻)が何もしてくれない」など、愚痴ともいえる話に終始してしまうこともあります。これでは、せっかく意を決して相談に赴き、職員にも時間をとってもらったのに、「話を聞いてもらっただけ」という結果になりかねません(もちろん「話を聞いてもらう」ことが相談者の希望であるのならば、否定はしません)。

行政職員から何か具体的なアドバイスや協力を引き出したいのであれば、相談に行く前にその内容を整理しておきましょう。たとえば、以下の内容は最低限、まとめておきます。とくに本人の生活状況(現状)については、精神疾患の有無の判断や、支援内容を考えるに当たっても非常に重要となります。

精神疾患家族 保健所への相談

ポイント② 「どんな助けを求めているのか」を具体的に伝える

一般的に、精神疾患は身体疾患に比べて「後回し」にされがちです。子供が幼いうちであれば、学校の先生などが気づいて専門家への相談を促してくれることもありますが、成人してしまうとその機会もなくなります。本人がひきこもりがちなケースではとくに、問題は家庭の中に集約され、時間だけが経過していきます。つまり、家族が「相談に行こう」と腰を上げた時点で、問題はそれなりに肥大していることが多いのです。

ここで家族に理解してほしいことは、「行政に相談したからと言って、一発解決するわけではない」ということです。保健所や医療機関には「何度も」足を運び、目の前の問題を「一つずつ」クリアする。その覚悟が必要です。

そのため、家族はその都度、先方に「どんな助けを求めているのか」を明確に伝えることを心がけてください。具体的には以下のようなものがあります。

精神疾患家族 保健所相談

「相談に行くだけで精一杯なのだから、あとは専門家が導いて、解決してくれないのか……」

ただでさえ家庭の問題で手いっぱいで、家族もまた心身ともに疲弊しているのですから、そのような気持ちになるのも理解できます。

しかし精神保健福祉行政の現状をお伝えすると、当事者(患者さん)の人権を護るという観点から、相談や支援は基本的に「本人の同意」が必要とされています。この傾向は年々、強まっており、つまり「家族」が相談に行っても、「本人を連れてきてくれたら相談に応じます」「本人の同意が取れるなら、自宅訪問します」と言われてしまうことが増えているのです。

そのような中で、家族からの相談に応じてもらい、かつ具体的なアドバイスを引き出したり、職員に実際に動いてもらったりするためには、家族側にも相応の努力が必要ということです。どうかそのことを念頭に置き、相談に行ってほしいと思います。

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「家族が精神疾患かもしれない……」まずはどこに相談に行くべき?病院はどうやって見つけるの?という基本事項に関するノウハウ

本人を精神科医療につないだあとに大切なこと(病識をもたせること、退院後の環境調整など)に関するノウハウ  

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